高校生ラップ選手権のLick-Gって何者?

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BAZOOKA!!!の名物企画『高校生RAP選手権』が盛り上がっている。第9回目を数える今回の高校生ラップ選手権は、一皮むけて大会としてワンランクレベルが上がった印象。今回初出場の”ちゃんみな”や”Rei@hi”と過去に登場したフィメールラッパーのバトルスキルを比べてみるとレベルの差は特に顕著だった。 以前まで散見したネタっぽさ、使い回され陳腐化したフレーズがだいぶと減った。

今回は第9回高校生ラップ選手権で惜しくも準優勝に泣いた最年少ラッパー『Lick-G』を特集する。一言で言うとLick-Gはヤバい。

第9回高校生ラップ選手権

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巷で流行中の「高校生ラップ選手権」はスカパーのBAZOOKAの恒例企画。半年に一度に開催されているフリースタイルラップの大会だ。回を重ねるごとに徐々に規模が大きくなり 今回は収容人数3600人の大阪南港ATC HALLで開催された。

BSスカパー!『BAZOOKA!!!』名物、即興のRHYMEとFLOWでバチバチにやり合う“フリースタイルラップの甲子園”!HIPHOPじゃなきゃ描けないムキ出しの青春!見逃すのはナシや!http://www.bs-sptv.com/bazooka/rap/

Lick-Gって何者?

さて今回ご紹介するLick-G。まずは簡単にプロフィールをまとめる。

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Lick-G プロフィール

  • 年齢:17歳(現在高校2年生)
  • 出身:神奈川県逗子市
  • 備考:日本人の父とイギリス人の母を持つハーフ

Lick-Gはすでに数々のMCバトルに参加し実績を挙げている。17歳という若さに目が行きがちだが、明らかにバトル慣れした大胆不敵な態度は”高校生ラッパー”という括りでは捉えられない。年齢でちやほやされることを拒絶するような雰囲気を醸し出しプロの風格さえ漂う。

さて、実際にLick-GのMCバトルはどんなものなのか?UMBや罵倒、戦国スパーリングなどで既に活躍しているが、ここでは高校生ラップ選手権での彼の姿を紹介したい。

Lick-G vs 写楽(第9回高校生ラップ選手権準決勝 )

高校生ラップ選手権での活躍

MC漢も言うようにこのバトルは今大会のベストバウトだった。 写楽の的確でユニークなアンサーも秀逸だったが驚くべきはLick-Gのライミングとフロウだ。たたみ掛けるように固く踏む韻とあえてリズムを崩すフロー。特に彼のフローはバリエーションが豊富で型を全く感じさせない。即興にこだわるLick-Gの魅力の1つだ。

リックジーのラップから他と異なる印象を受けるのは、以下のような特徴があるからだと思う(フロウについては人それぞれ意見があると思うので触れない)。

1.即興が音源のようなグルーヴ感

過去の選手権の参加者を例にとると、言☓the answerのバトルは相手へのアンサーを絶妙に組み合わせながら自分色のリズムで韻を踏む、いわばMCバトルに特化したスタイルだ。一方、リックジーのフリースタイルは固い韻を踏みアンサーを返しながらも、音源を聴いているような心地よさがある。

2.アングラ感とアティチュード

バトルは基本的に自分のターンと相手のターンを交互に行う。つまり相手のターンでは基本的に言葉を発することができない。そんなとき唯一観客にアピールできるのがアティチュード(ステージ上の振る舞いや態度)だ。彼の態度は堂々としているというレベルではない。圧倒的な落ち着きがあり、沈着冷静に相手のラップを観察しているようだ。この点は他の高校生とは一線を画す部分だと個人的には思う。

3.独特の間

特に高校生ラップのようなMCバトルでは多くのラッパーが短い小節に言葉を詰め込みすぎてしまいがち。このあたりLick-Gは空白の時間を作るのが抜群に上手い。パンチラインのあと、余韻を楽しめと観客に諭すように黙りこむことがある。これは数多くのバトルを経験しステージ上での余裕がなければなかなか真似できない代物だ。

Lick-Gは音源もヤバい

これまでリックジーの即興に焦点を当ててきたが、音源を聞くと更に彼のポテンシャルに驚くかもしれない。以下は無料公開されているKarasuという曲だ。リリックを一部引用する。 

重たいは鉛筆は風物

山びこみたいにloopする洞窟

どんな苦痛だった日も固く縛った靴紐

邪念が足を包み込む

悩んで病んでその分巻いて焚いて

泣きたくなったら泣いてたいね

この狭い世界で本当の価値なんて無いね

分かりながら汗掻いてる

Gainを上げればpainも上がる

白旗を上げるにはまだ早い*1

ラップ自体もかなりクールだが、驚くべきはリリックあまり年齢を引き合いに出したくはないが、明らかに16歳が書く詩ではない。 

この狭い世界で本当の価値なんて無いね

分かりながら汗掻いてる

この世界の不条理さ、虚しさを理解してしまうと多くの人は精神的に病んでしまったり、生きづらくなってしまう。しかしそれでもなお、と思える人間は本物。クソみたいな世界でもなお生きることに意味を見出すことができる人は本当に少数だ。

16歳にしてそのことに気付いている。Karasuは傷みを知っている人間しか書くことができない、切なくも胸が熱くなるリリックだ。

今後も注目のラッパーLick-G

Lick-Gは精力的にな音楽活動を継続中。今後も多くのアンダーグラウンドなMCバトルやLIVEで活躍するだろうし露出も増えると思う。惜しくも優勝を逃した高校生ラップ選手権の舞台にもおそらく帰ってくるだろう。1年後、2年後が楽しみな本格的なラッパーだ。いつかインタビューしてみたい。

■Lick-Gの音源まとめ

▼『Trainspotting』 Lick-G

*1:Karasu/Lick-G – YouTube

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